理事長挨拶

松尾哲矢(立教大学)

 2021-2022年度、本学会の理事長を仰せつかりました。この2年間、菊幸一会長、石坂友司事務局長をはじめ理事・各委員の皆様方と共に学会運営に努めたいと思います。皆様、何卒宜しくお願い申し上げます。

 本学会は、1991年に創設され、2021年で31年目を迎えます。学会をよりよいものとするために、次の10年をどのように構想すればよいのでしょうか。

 30年の蓄積の上に立って、各会員の研究の促進、学会全体の研究の量的増大と質的向上、会員相互の情報交換・研究交流、学会の研究成果の発信とプレゼンスの向上、学問としての成果の拡大等が求められます。

 現在、学会員は正会員320名、学生会員65名、計385名です。2017年度が正会員324名、学生会員77名、計401名でしたので、ほぼ横ばいか、少し減少傾向にあるとみることもできます。個人レベルでいえば、「継続は力なり」かと思いますが、組織レベルでは「継続は停滞なり」といえるかと思います。組織としては、常に「革新こそ継続なり」と考えることが必要なのかもしれません。

 本学会の特徴の1つは、学生会員を含め、若い会員の潜在的・顕在的エネルギー量の多さにあると思います。中堅以上の会員の皆様の研究に触発されて、若い会員が研究レベルを上げていく、その成果をものおじしないで発信していく。またその意欲と取り組みに触発されて中堅以上の会員がさらに研究を深めていく。この循環をさらに進めていくための環境の整備と支援をどう考えていけばよいのか継続的に検討していく必要があります。

 この2年間で取り組むべき課題として以下の3点を挙げたいと思います。

1.各会員の研究の促進、学会全体の研究の量的増大と質的向上-学会誌への投稿の促進、学生フォーラムの展開、そして学会賞の運用

 まず学会誌への投稿に果敢に挑んでいける環境をさらに充実する必要があろうかと思います。現在、「スポーツ社会学研究」は、年間2号体制となっています。この間、編集委員会の皆様の多大なるご尽力で充実した学会誌になってきたと思います。そのなかで投稿された原著論文は、明確な規程にしたがって審査されていますが、投稿数は必ずしも多いとはいえない状況です。会員の皆さん、なかでも学生会員や若い会員の皆様が投稿しやすい学会誌にするにはどうすればよいのでしょうか。

 さまざまに検討する必要がありますが、例えば、どのレベルであれば受理されるのか、「査読視点及び基準の見える化」もその一つの取り組みになるかもしれません。また「学会大会において質の高い発表に対する投稿の促し」等を積極的に進めていくこともあろうかと思います。今後、検討を進めながら、皆さんに投稿していただける学会誌になるよう努めていければと思います。

 また、この間、学生会員を中心に「学生フォーラム」が充実してきていますが、さらに学会として支援しながら、学生相互の交流と研鑽の機会を充実させていく必要があると思います。

 さらに、質の高い研究を積極的に奨励することは、会員の皆さんの励みとなるという意味で重要な取り組みだといえます。学生研究奨励賞の授与は始まっていますが、学会賞についても実質的な運用に入っていく段階にあろうかと思います。

2.会員相互の情報交換・研究交流-会員サービスの充実と手続きの簡素化

 会員の皆様の満足度を規定する要因は多様ですが、自らの研究発表の場があるということはもちろんのこと、学会からのさまざまな情報が得られること、研究上の刺激が得られること、学会員同士のコミュニケーションが図れること、そして学会の年会費等の手続きが簡易であることなどが挙げられると思います。

 「学会からのさまざまな情報」については、学会のHP、学会ニュースの充実、会員に有益と思われるセミナー等の紹介を充実させていくこと、「研究上の刺激が得られること」「学会員同士のコミュニケーション」については、学会大会の充実とともに研究セミナーの開催等を充実させていくことが必要かと思います。

 「学会の年会費等の手続きの簡素化」については、事務局のご尽力で【新会員管理システム】が起動しました。私もやってみましたが会費の納入、領収書の発行など、簡単に手続きができました。会員の皆様にとっての利便性を高め、事務局業務の効率化につながる本システム、ぜひご活用ください。

3.学会の研究成果、学問としての成果の発信

 30年にわたる学会での研究の積み重ねと学問としての成果の発信の方法はいくつか考えられますが、研究者を志す方ばかりではなく、スポーツ社会学を学びたいと思う学生や院生に対して積極的に発信することも重要だと思われます。例えば、「スポーツ社会学(体育社会学)」は中・高校の保健体育の教員免許取得に係わる専門科目として位置づけられていますが、大学等の授業で活用できるテキストの提供やセミナーの開催等は、検討する価値があるものと思われます。

 これら以外に国際化の進展等、取り組むべき課題は多々あります。この2年間、皆さんのご意見に耳を傾けながら、理事の皆さんとともにできる限り努めて参りたいと存じます。何卒宜しくお願い申し上げます。