学会長挨拶 菊幸一(筑波大学)
学会大会30周年を迎えるにあたって ―新型コロナ禍での記念大会―

現在、新型コロナ感染症対策のため、3度目の緊急事態宣言下にある東京の自宅で本原稿を書いています。4月末から5月初旬にかけて、特に連休中の人流を抑え不要・不急の外出を制限するための措置ですが、さすがに「3度目」ともなると人々の慣れも手伝ってか、なかなか思うような効果が出ていないようです。同様に、今期(2021-22年度)に図らずも再び本学会の会長を務めさせてもらうことになった私も、これで通算「3度目」の会長就任ということになり、「仏の顔も三度」までではありませんが、学会運営に対するある種の慣れ合いから(懐深い会員の皆さんによる)批判が生じることがないように改めて気を引き締めているところです。
ただ、冒頭に書いたように学会を取り巻く社会情勢、特に未だに収束の状況が見えない新型コロナ禍においては、今期も引き続き通常の対面による学会大会開催への見通しの困難さをはじめ、諸委員会活動にも大きな支障をきたす恐れがあり、スムーズな学会活動に向けて予断を許さない事態にあることに変わりはありません。その意味では、会員の皆さんの協力を得ながら、前期(2019-2020年度)において培ったICT活用をベースとするオンライン大会開催のノウハウや新たな会員登録の手続き等をうまく継承し、さらなる学会活動の充実に向けて尽力していきたいと思っています。幸いなことに、第30回記念大会は、学会事務局と主催校の京都産業大学をメインとする関西方面の学会大会組織委員会がタッグを組み、かつ会員の皆さん一人ひとりの協力のお陰で、何とか無事に終えることができました。この実績をうまく引き継いでいきたいと考えています。
ところで、今期の理事選挙では初めて女性理事を増やすことを目的とした「クオータ制」を導入しました。その結果、15名の理事のうち会長推薦を含め5名の女性理事が誕生し、全理事の3分の1を占めることになりました。また、7つの委員会のうち、4つの委員会で女性理事が委員長に就任することになりました。このような事態は本学会にとって画期的なことですが、これもこれまで「男性学」の立場からジェンダー問題を提起されてきた伊藤公雄元会長や、2期にわたり監事として参考となる意見や資料を提供していただいた飯田貴子会員をはじめとする会員の皆さんのご尽力の賜物であると感謝しています。今期以降は、このようなジェンダーバランスの成果が試されるわけであり、単なる数合わせとならないように、互いに協力しながらその成果を上げていきたいと思っているところです。
また、今期の理事と委員には若手・中堅の会員も比較的多く選出されていることから、これまでの慣習を見直し、思い切った改革を進めていく機会にもなるのではないかと期待しています。私としては、そのような新たな提案や提言を大いに歓迎して検討を重ねていきたいと考えています。
外に目を向けると、日本学術会議の在り方についてさまざまな議論があるように、学会全体の在り方自体が対社会との関係から問われるような時代になってきました。本学会としてもこのことを重く受け止めながら、スポーツ社会学の研究成果を内部的な評価だけに止まらせるのではなく、広く社会に向けて発信することでその評価が問われるようなしくみをつくっていく必要があると思っています。そのためには、まず学会発表における活発な議論や建設的な論文査読を通じて、スポーツをめぐる社会課題に対して幅広い視野をもった研究者を育てていく地道な努力がよりいっそう求められます。
会員の皆さんとともに、このような学会のミッションを少しでも果たしていきたいと思っていますので、どうかよろしくお願いします。