1.概要
 日時:2025年12月27日(土)14時~17時 
 会場:立教大学池袋キャンパス 7201教室/オンライン(ハイブリッド形式)
 参加者数:立教大学 池袋キャンパス:15名、オンライン:7名

2.内容
 個人発表
 ① 塩崎世佳氏(北海道大学大学院)
  「武道における「型」の習得と障害のある実践者の身体―研究枠組みの検討―」

 ② 堀 聡音氏(名古屋大学大学院 教育発達科学研究科 教育科学専攻)
  「部活動の地域展開における地域側の担い手論理の構築 ―「地域の実情に合わせた」移行とは何かに着目して―」

 ③ 村下慣一氏(立命館大学大学院)
  「ノルベルト・エリアスにおける「文明化」概念の再考 -進化論批判をめぐる学術的評価の妥当性(6)-」

 ④八木 まりな氏(国際基督教大学)
  「羽生結弦ファンダムにみる現代スポーツファンダムの形成と実践」

 第35回学生シンポジウムの企画説明
  「スポーツ社会学者は何をしてきたのか―「あなた」の語りから―」

3.報告

 2025年12月27日、立教大学池袋キャンパス 7201教室での対面実施とオンラインでのハイブリッド形式にて2025年度第2回目となる学生フォーラムを開催した。当日は、本学会研究委員の先生方を含め22名が参加した。

 大学院生からの個人研究報告のセッションでは北海道大学大学院の塩崎世佳氏、名古屋大学大学院の堀聡音氏、立命館大学大学院の村下慣一氏、国際基督教大学の八木まりな氏の4氏による報告が行われた。

 塩崎氏の報告は、身体に障害を持つ弓道実践者が「型」がある中でいかにして弓道を実践しているのかという報告であった。既存の「型」という作法がある中で、身体に障害を持つ実践者がどのように「型」に対して身体的な困難を経験しているのか、いかにしてみずからの身体にあった弓道を「型」との折り合いをつけながら実践するのか、そして規範と身体条件の間の相克を実践者はどう捉えているのかという話の中で、障害を負った実践者は可能な限り「型」に近づけながら、自身の身体で可能な動きを追求していた。しかし、あるインタビュー対象者は自身が行なっている方法は「ズル」であると認識しているという「型」と自己の中での可能な動きの間の葛藤を抱えていた。上記のように、障害者の「型」を追求する弓道実践において、個人に困難が帰責されてしまう危険性があると指摘した。このような個人の能力は既存の制度環境の中で発現するものとして捉え直すという研究構想を描いているという報告であった。フロアからの質問では、ルールのもとで体が動けばいいというスポーツと、身体の動かし方に制約が存在する武術、武道という対比がある中で、この研究が武道、障害者スポーツ、身体実践といった研究のどこに位置づけていくのかという研究の方向性に関する質問や、健常者のスポーツといかに違うのかといった質問が多く出され、議論が盛り上がった。

 続いての堀氏の報告は、文部科学省が部活動の地域移行を進める中で、部活動の受け手となる地域側がいかなる論理で部活動を受容しているか、そして「地域に合わせた」部活動がいかに行われているのかについて研究する修士論文の方向性についての議論であった。従来の先行研究では部活動の地域移行において、受け皿となる地域クラブ側についての議論が不足していることに着目し、部活動の地域移行の実証事業において先進事例となっている岐阜県を調査地として、インタビューを中心とした調査によって部活動が地域に再配置される過程、その中で、「地域の実情に応じた」という政策文書の文言がいかに具現化されているかについて明らかにするという方向性を示した。議論では、地域移行における学校と地域という分類や教師の立ち位置についての質問や、過去の事例で成功/失敗の要因についての質問がなされた。また、対象となる岐阜県の事例について、その特徴や先進性について議論がなされ、すでに岐阜県では保護者会(保護者クラブ)により受け皿となりうる組織があること、多治見市や羽島市がすでにモデルとなりそうな事例であることなどの説明がなされた。

 村下氏の報告は、以前よりノルベルト・エリアスの「文明化」の概念を検討してきた中で、以前までの報告に引き続くものであった。マックス・ヴェーバーと、ノルベルト・エリアスの間において、これまで両者の関係について多くは論じられておらず、その点について丁寧に論証されることとなった。また、報告者はエリアス自身が進化論的な性格を持っているという立場を改めてとりつつ、西洋社会にフォーカスしながらも、全世界において通用するような文明化の道具立てをしようとしていたということが重要であったと指摘した。精緻に文明化の過程の解釈をしつつ、その上で日本武道への応用可能性についても言及された。フロアからの質問では、フィギュレーションとシビライジングという概念の関係の捉え方について問われ、両者は何を問おうとするか、描こうとするかによって当然その程度は変化するが、そこにはどちらも同時に関係し合いながら進行しているという見方が妥当ではないかという結論に帰結した。

 八木まりな氏からは、羽生結弦選手のファンダムの形成がいかにしてなされ、その上で羽生選手の存在と男性性をファンがどう解釈しているか、フィギュアスケートの競技文化やメディア報道がファンによってどのように解釈され、ファンの中に、認識や価値観が形成されているかという3つの問いのもと行われた研究について報告がなされた。ファンになる過程では一瞬の好意ではなく複数の経験からなることや、参加者自身と重ね合わせながらなること、男性性は内在的な身体性や継続的な努力といった部分に男性性を見出すこと、認識や価値観はファン同士の参加型文化、つまりファンが受け手だけでなく作り手や担い手として主体的に解釈し、ネゴシエーション、つまり仲間の影響を受けつつ意味を作っていることを明らかにした。フロアからの質問では、事例として独自性があることから、他のスポーツ等と比べていくのか、それとも他のファンダム研究と比較していくのかなど研究の方向性に関する質問や、羽生選手がプロスケーターに転向するなどキャリアが移る中でのファンダムが変化していくのかを研究したら面白いのではないかといった研究を深める方策が提案された。

 最後に、世話人から3月のスポーツ社会学会の学生企画シンポジウムの主旨説明を行なった。フロアからは、企画を進める際、一般論に落とし込んでいく視点を大切にしながらも企画者のオリジナルの視点を大切にしつつ議論の展開がなされるとより充実した内容になるのではないかというコメントがあった。

 今回の学生フォーラムでは、修士課程の1年生から博士論文の執筆も終盤に差し掛かった学生まで、幅広い世代の報告があった。また内容としても、修論構想から学会発表の叩き台とする報告まで、さまざまでありながらもそれぞれの報告に対して活発な議論が行われた。

 また今回は学生フォーラム開催の形式を、対面をベースとしたオンライン参加可のハイブリッド形式とした。全国各地から対面参加・オンライン参加合わせて22名の大学院生・先生方にご参加いただき、質問時間が足りないほど議論も活発に交わされ、内容も豊かなものとなった。オンラインにて参加いただいた方との交流時間をいかに設定するかは今後の課題としつつ、より良い開催の方法を引き続き模索したい。

 最後に、今回の学生フォーラムには非学会員ながらも新たなメンバーに参加していただいた。スポーツ社会学領域に関わりつつも、他の領域で研究活動をしている大学院生の仲間も多数いることから、そういったメンバーにもこの会を知ってもらい、領域に関わらず多くの研究者に参加いただきつつ、より豊かな議論をできる場にしながら本学会のコミュニティを広げていけるような会にできないかとも考えている。スポーツ社会学会をはじめ、仲間を増やしつつ学術界を盛り上げていけるように、引き続き本フォーラムの開催形式等も検討していきたい。

文責:学生フォーラム世話人(藤、八木一弥、船木、小杉)