1.概要

日時:2026年8月3日(月)14時~17時 

会場:立教大学池袋キャンパス 14号館  D603教室/オンライン(ハイブリッド形式)

参加者数:立教大学 池袋キャンパス:15名、オンライン:7名

2.内容

<個人研究発表>
① 小杉亮太(一橋大学大学院社会学研究科) 「アリーナ建設プロセスの検討」
② 藤 杏子氏(立教大学大学院)「ボクシングジムにおけるスパーリング練習の組織化」

<異分野交流企画(研究報告) >
 馬場徳文氏(日本体育大学大学院)「国際開発研究、SDPに関連する取り組み」

3. 報告

 2026年8月3日、立教大学池袋キャンパス14号館D603教室での対面実施とオンラインでのハイブリッド形式にて2026年度第1回目となる学生フォーラムを開催した。当日は、本学会研究委員の先生方を含め22名が参加した。

 大学院生からの個人研究報告のセッションでは一橋大学大学院社会学研究科の小杉亮太氏、立教大学大学院の藤杏子氏が発表した。そして異分野交流企画では日本体育大学大学院の馬場徳文氏にご発表をいただいた。

 小杉氏の発表では、日本においてアリーナ建設がどのように行われているのかについて、昨年、愛知県豊橋市で「多目的屋内施設及び豊橋公園東側エリア整備・運営事業」という、プロチームが使用する体育館の建設をめぐり住民投票が行われたことに着目した研究について発表した。この事例では、住民投票以前に建設計画が市長選挙などにより何度か変更になっており、それらのプロセスや建設計画に対して住民が違和感をもち住民投票の請願を行い、2度の請願は議会で否決されていた。しかし、2024年の市長選挙で反対派候補が勝ったことで議会とねじれ、その均衡の解決策として住民投票が実現した。このような時系列から、市長選挙が建設プロセスに影響を及ぼしていること、海外の既往研究と同様、プロスポーツリーグ・チームとその基準が建設プロセスや投票行動に対して影響を及ぼしていることなどを指摘した。質疑応答の時間では、この事例自体が非常に面白いが、どのように研究を位置付けていくのかというところを中心に議論が行われた。特に、文化施設などとの比較や、より国政や市の行政全体というマクロな部分をみる必要性と、逆にミクロな時系列の中のズレに着目した研究の可能性について話が行われた。

 藤氏の発表では、ボクシングジムにおけるフィットネス会員とプロ選手のスパーリング練習を対象として、それを見守るコーチのかけ声を分析した。ここでは、ビデオデータで実際の発話と動作の関連付けを記述するトランスクリプトを共有した上で発表がされた。そのデータではコーチはフィットネス会員へのかけ声は実際にその場で出す技を、そして、プロ選手に対しては具体的に実行するべき技ではなく、抽象度の高い構えや姿勢などを指示するといった使い分けが見られることを指摘した。そして、この使い分けによって実力差のあるフィットネス会員とプロ選手が互いの動きを止めずに、スパーリングを維持できることを明らかにした。当日の議論では、そもそもスパーリングが維持されるとはどのようなことなのか、そして、プロ選手にとってこの練習が練習として成り立っているか、ビデオ撮影前に打ち合わせなどがあったのではないかといった疑問から、プロの人の強く打ちすぎないといったふるまいで身体による調整がされていると共感を得られ、議論が盛り上がった。

 馬場氏の発表では、JICA海外協力隊の体育隊員としてヨルダンのパレスチナ難民キャンプで活動した自身の経験をもとに、SDP(Sport for Development and Peace)の実践における援助者の「善意」と、そのなかに潜む暴力性について検討した。馬場氏は、現地の人々と同じ目線で活動する「現地主義」を志向していた一方、実際の活動では授業運営の難しさや現地教員からの期待に直面するなかで、「日本人」「援助者」「教員」としての立場を利用し、日本の学校教育における規律や規範を持ち込みながら、次第に厳格な指導を行うようになっていった。日本の方式を導入した指導は現地教員から評価され、自身も活動がうまくいっていると捉えていたが、後に現地スタッフから児童が自身を怖がっているように見えると指摘されたことで、自身の実践を捉え直すこととなった。このような経験から、善意をもって活動する援助者であっても、自身がもつ「日本人」「援助者」「教員」といったポジショナリティによって、無自覚に抑圧的な実践を行う可能性があることを指摘した。当日の議論では、自身の経験をSDP実践全体に通じるものとして整理するだけではなく、パレスチナ難民キャンプという環境や、そこで馬場氏自身が経験した出来事をより細かく記述することの可能性について議論が行われた。特に、他の海外協力隊員とは異なる経験をしていた可能性もあることから、この事例固有の文脈や経験を丁寧に描くこと自体に研究としての面白さがあるのではないかという意見が出された。

 今回の学生フォーラムも、前回に引き続き、対面をベースとしたオンライン参加可のハイブリッド形式で開催した。対面参加・オンライン参加合わせて22名の大学院生・先生方が参加し、いずれの発表も参加形式を問わず積極的に質問やアドバイスが寄せられた。

 また、今回の学生フォーラムは「異分野交流企画」として、スポーツ人類学の分野で研究を行う大学院生を迎えて議論を行う企画を実施した。スポーツを取り巻く環境やそこに関わる人々の状況がより一層複雑化している現代社会において、ある一つの領域に限らず様々な学問領域の知見や視点に触れながら、自らの研究を捉え直していくという営みはますます重要になっていくのではないかと感じる。そのための第一歩として、初めての試みではあったものの、大変学びの多い機会となった。

 今後も、学生フォーラムを通してスポーツ社会学会員の院生や先生方、そして他領域の研究者とも議論をしつつ想像力や社会の解像度を高めていくこと、そして日本スポーツ社会学会の若手コミュニティを広げていけるような会にしていくことを目指し、引き続き本フォーラムを運営していきたい。

 多くの先生方や先輩方に支えていただいていることを感じつつ、無事に終えることができた。改めて感謝申し上げたい。

文責:学生フォーラム世話人(藤、船木、小杉、八木)