2023年2月2日

日本スポーツ社会学会研究委員会
金子史弥
山口理恵子

日本スポーツ社会学会研究セミナー開催のご案内(第2報)

 

 謹啓 時下益々ご清祥の段、お慶び申し上げます。
 さて、研究委員会では毎年研究セミナーを開催しております。参加は無料となっております。本学会会員のみならず、日ごろからスポーツや社会学に関心をお持ちの方々の参加もお待ちしております。万障お繰り合わせの上、ご参加いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

敬具

日 時:2023年2月13日(月)19時~20時30分
会 場:Zoomによるオンライン開催
内 容:「日本女子サッカーの現在地:「ブーム」から「文化」へ?」
報告者①:大住 良之(サッカージャーナリスト・FC PAF監督)
報告者②:東明 有美(関東学園大学准教授・元サッカー日本女子代表)
指定討論者:稲葉 佳奈子(成蹊大学)
司会:山口 理恵子(城西大学)

 参加希望の方は、2月10日(金)までにhttps://forms.gle/S8eaBqgWuDx1GX4c9より、お申し込みください。期日までに申し込みをされた方にのみ、ZoomのミーティングIDとパスコードをご連絡いたします。
 なお会員に対しては、学会ウェブサイトにて期間限定でオンデマンド配信もいたします。オンデマンド配信の視聴の場合は、申込は必要ありません。

問い合わせ先:yama-rie※josai.ac.jp(城西大学:山口理恵子)
f-kaneko※fc.ritsumei.ac.jp(立命館大学:金子史弥)
「※」を「@」に変えてください

【セミナー概要】
 アルゼンチンの優勝で幕を閉じたW杯カタール大会は、開催国の人権問題や招致をめぐる汚職疑惑が問題視されるも、日本国内ではベスト16に入った日本男子代表チームの私生活や友情秘話などがマスメディアの中で持ちきりであった。これは、2011年にW杯優勝を果たし帰国した後、一躍メディアに担ぎ出された「なでしこジャパン」の姿を彷彿とさせる光景ではあったが、2011年から10年の時を要した女子プロリーグ(WEリーグ)の発足が物語っているように、日本における男女のサッカー環境は大きく異なる。
 奇しくもWEリーグ1年目のシーズン途中に、スペイン・バルセロナの女子チームが、女子欧州チャンピオンズリーグで9万1648人を集客したとの報道が流れた。観客動員目標を5000人としたWEリーグの1年目の平均観客動員数は1,560人であり、コロナ禍での開催であったとはいえ、海外と大きく水を開けられた状況にある。
 2023年は、女子のワールドカップが開催される年でもある。研究セミナーでは、日本の女子サッカーの「これまで」をジャーナリストとして、また女子サッカーの監督として具に見てきた大住良之氏と、元日本代表であり現在はWEリーガー研修のコーディネーターを担当している東明有美氏から、日本の女子サッカーのこれまでの歴史や選手を取り巻く環境、海外との違い、先行研究の蓄積などについて報告していただく。また指定討論者として成蹊大学の稲葉佳奈子氏をお迎えし、日本の女子サッカーのこれからについて議論する。

【報告要旨】
大住良之氏
 サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」の2011年の快挙は、多くの日本人の記憶に残っている。東日本大震災の複合的な災禍に日本中が暗く沈み込んでいた時期、女子ワールドカップで見せた最後まであきらめずに戦う姿勢は、大きな勇気づけになった。しかしそれ以前、そしてそれ以後の日本の女子サッカーがどんな歩みをたどってきたかを明確に知る人は少ない。日本サッカー協会が女子チームの登録を受け付け始めた1979年には女子チームは日本全国にわずか52、選手総数919人だった。公表されている最新のデータである2021年には、1338チーム、2万8005人となっている。その間に、仲間を広げ、レベルを上げる努力が、どんな形で展開されてきたのか。そしてその先に得られたなでしこジャパンの女子ワールドカップ優勝という大きな成果の後の10年間、急激に変化しつつある世界の女子サッカーの状況のなかで、どんな課題が見えてきているのか。40年間の歴史を振り返りつつ俯瞰してみたい。

東明有美氏
 2011年になでしこジャパン(日本女子サッカー代表)がFIFA女子ワールドカップで世界を制してから10年以上が経過した。その間、世界の女子サッカーは技術的にもビジネス的にも成長を続け、ヨーロッパを筆頭に多くの国で女子サッカーのプロ化が進められている。国際サッカー連盟(FIFA)も2018年に発表した女子サッカーの成長戦略「FIFA Women’s Football Strategy」において2019年から2022年の4年間に女子サッカーに10億ドルの投資を表明するなどサッカーにおける次なる市場として注目を集めている。一方、日本では2011年のなでしこフィーバー以降、女子サッカーの人気・実力は低迷しており、その打開策として2021年に国内初のプロリーグである「WEリーグ」が開幕した。1試合の観客動員目標を5000人としたシーズン初年度は、結果として平均1560人にとどまったものの、1万人以上を集客した試合もあるなど今後の飛躍が期待される。
 本報告では、3月に行われるシンポジウムの前段として、社会学的視点から日本における女子サッカーの現状と諸外国との比較を行い、日本の女子サッカーが向かうべき方向性を考察する。」